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教授×フランSS 「事始斯如」

吸血鬼の館、紅魔館。
その主の妹たるフランドール・スカーレットは、胸に1つだけお願い事を持ちながら求める人のいる図書館へ駆けていた。廊下を小走りに駆けてどれくらいしただろうか。やがて目的の図書館に着くと、フランはその扉を目一杯の力で両手で押し開けて中にいるはずの人の名を呼んだ。
さて、図書館の扉は木製の蝶番式である。家にそのような形の扉がある諸君ならわかると思うが、過剰な力で開いた場合、扉は反動で返ってくる。ゆえに、
「教授ー!どk(バタン)むぎゅ!?」
フランは跳ね返ってきた扉に顔をぶつけて扉の外で悶絶することとなった。一方、呼ばれた霜月はというと、
「フランちゃん?あれ、いない?」
先ほどまでいた書棚の隙間から扉の見えるところまで出てきたが、自身を呼んだはずのフランの姿が見当たらないことに首を傾げつつ、扉の方へ歩き出した。すると、扉が少し開いてその空間から鼻を押さえたフランが涙目になりながらふらふらと入ってきた。
「教授~どこ~?」
「おーい、こっちだよー、フランちゃーん」
その姿を見た霜月は自分のいるところを大声で伝えながらフランのところへ向かって歩いて行く。フランも霜月の声を聞いてそっちへ向けてふらふらとしながらだが向かっていった。
「フランちゃん、こんにちは。大丈夫かい?」
「教授、こんにちは…。あぅぅ~、鼻が痛いよぅ…」
霜月が声を掛けると、フランはちゃんと挨拶を返したが、押さえたその鼻は真っ赤に染まっていた。
「あらら…ちょっと手をどけてくれるかい?痛いのが無くなるおまじないをしてあげる」
「おまじない?」
霜月はフランに目線を合わせるようにしゃがむと、フランの鼻に手をかざす。フランは何をするのか興味津々な目で教授を見る。そして、
「いたいのいたいのとんでけー」
「ほへっ?…ぁ、痛くない!教授すごーい!」
霜月がやったのは小さい子にやるような手だったが、フランはそれで痛みから気が逸れたのか、痛みをそこまで感じなくなってびっくりしながら霜月に笑顔で抱きついた。霜月はそれを受け止めると、フランに聞く。
「さて、フランちゃん。今日は何かな?」
「あ、えっとね、教授。………(ごにょごにょ」
そう聞かれて、フランは今日ここに来て霜月にお願いしたかったことを言った。


フランのお願い事の翌日。レミリアの号令の下、紅魔館の主要メンバーたる5人は会議室へと集まった。そこまで大きくは無い円卓へ主人で議長たるレミリアを中心に左から順に咲夜、美鈴、パチュリー、岡、なたと座っていた。全員が集まったところでレミリアが口を開く。
「さて、今日パチェや咲夜達に集まってもらったのは他でもない、フランのことについてよ」
その内容を聞いて全員が顔を引き締める。おとなしくなったとはいえ、フランである。それがわかっているからこそ全員冷静になって決めなければならないとわかっている。
「霜月から報告と陳情が来たわ。『フランが外に出たいと言っていた、自分が責任持って見るから出させて上げてくれないか』だそうよ」
「「「なっ?!」」」
レミリアの言葉に驚いたのは咲夜、なた、岡の使用人隊のトップ3人だった。咲夜は絶句したがすぐに我に返り、
「お嬢様、フランドール様を外へ出すというのですか?!いくら何でもそれは危険すぎます!」
即座に反論する。だが、レミリアはそれを手で押さえると、さらに口を開く。
「今、咲夜が言った通り、確かに落ち着いたとはいえフランを外に出すには相当リスクが高いわ。紅魔館の主としてそれは重々わかってるわ。…でもね、私は紅魔館の主としてじゃなく、あの子の姉として…400年以上にも渡って閉じ込めたあの最愛の妹に世界を見せてあげたいとも思っているのよ…」
レミリアの言葉は、立場としての責と姉として妹の願いを叶えてあげたい姉心に挟まれた苦悩の言葉だった。そこまで言ってレミリアは一息をついて、
「だから今回あなた達を集めたの。今回だけは私一人の独断では決められないわ。だからあなた達から見て、フランを外に出してもいいか聞きたいのよ」
いつも自身に溢れ、独裁然としたレミリアにしては珍しい姿勢をとった。少しの間全員が押し黙り、その沈黙を破ったのはパチュリーだった。
「私は妹様を外に出してもいいと思うわ、レミィ」
「パチュリー様!?」
パチュリーの意外な答えに驚きの声を上げる咲夜。その声を聞きつつパチュリーは続ける。
「最近の妹様の姿をよく見てるけど、教授の言うことをちゃんと聞いてるし、彼が付いているなら大丈夫だと思うわ。だから私は許可させてもらうわ」
言い終えると、パチュリーは手元にあった紅茶を飲んで口を休めた。続いてなたが立ち上がる。
「では、畏れながら次は私が。私もパチュリー様と同じく外出の許可をお与えになってもよろしいかと思います。ですが、十六夜メイド長の申します通り、何もせずに外出されるにはフラン様の御力は強大過ぎます。なのでパチュリー様にフラン様へ抑制魔法を掛けて頂いた上で外出するという形がよいかと思います。私からは以上です」
言い切ると、なたはレミリアに一礼をして再び着席する。レミリアはそれを聞いてパチュリーへと目を向ける。
「だそうだけど、パチェ。抑制魔法はフランへ掛けることが出来るの?」
「そうね…私自身だけでは掛けるには魔力が足りないけど、レミィが力を貸してくれるなら出来ないことは無いと思うわ。でも掛けても暴走状態にでもなられると間違いなく術は破られるわ」
振られたパチュリーは数秒思案を巡らせて、この様に答えた。レミリアは少し悩むと美鈴に言う。
「美鈴、あなたはどう思うかしら?」
突然の指名に言葉を纏めていた美鈴は驚いて慌てながら立ち上がって直立姿勢になって答える。
「は、はい。えーっと…私はその霜月さんと余り交流する機会が無いので完全にどうと言うことも出来ないのですが、フラン様の御力はわかっているつもりです。ですがその上でパチュリー様が許可をしてもいいと仰られるなら私は許可をなさってもよろしいかと思います」
そこまで言うと、美鈴は着席して心を落ち着かせた。小さく「ふむ…」と言ってレミリアは考えると、
「じゃあ最後に俺が…」
「アンタはいいわ、岡。賛成3人だし。」
「酷いッス!お嬢様!」
最後に発言しようとしていた岡を制止しつつ口を開いた。
「わかったわ、さっきのなたの言うようにやってみましょう。その上で私からあの子に言って聞かせれば十分でしょう。パチェも咲夜達もありがとうね。それと岡、今からフランと霜月を執務室へ呼んでおきなさい。今日はこれで解散でいいわ」
そしてそのレミリアの号令とともに、会議は終わった。


岡に呼ばれ、レミリアの執務室へとやってきた霜月とフラン。挨拶をして入ると、2人はデスクに座るレミリアの前に横に並んで立った。そして、レミリアが口を開く。
「フラン、伝える前に1つだけ聞いておくわ。外に出たい?」
「うん!私、外に出て教授の言ってたものを見たり触ったりしてみたい!」
レミリアの問いかけに、フランは元気良く答えた。そう、と言ってレミリアは少し目を伏せて物思いに耽ると、目を開いて2人へ伝えた。
「フラン、霜月、決定を伝えるわ。パチェの抑制魔法を受けること、そして絶対にそれを破るような真似をしないこと。パチェの魔力回復の都合もあるから毎日とはいかないけれど、それを守る限りは外出を許可するわ。ただし、絶対に紅魔館の名に傷をつけるような真似はしないこと、いいわね?」
そこまで聞くとフランはぱぁっ…と笑顔になり、隣の教授に抱きついた。
「わーい!やったー!」
「おっとと。よかったね、フランちゃん。レミリア様、本当にありがとうございます。」
ちょっとよろけながら抱きついてきたフランを受け止め、レミリアに感謝の言葉を伝える霜月。レミリアはそれに微笑を浮かべて返答する。
「こちらこそ妹をお願いするわ、霜月。フラン、霜月のいうことをちゃんと聞きなさいよ?」
「はい!お姉様!」
「全身全霊を賭けて面倒を見させてもらいます。任せてください」
レミリアの言葉に、2人はそれぞれの言葉を返した。


そして数日後、フランの初めての外出日。
「じゃあ行こうか、フランちゃん」
「うん!」
霜月はフランを肩車すると、玄関を開いた。途端に日光が2人に差したが、出る前に予め日傘を差していたフランには日光は届かなかった。
「眩しー…」
「大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ、教授」
そんな会話をしながら門へと歩く霜月。そして門には美鈴が立っていた。そして2人の姿が近づくと、美鈴は門を開け、礼をした。
「霜月さん、フラン様、いってらっしゃいませ」
「洋服ありがとう!美鈴お姉ちゃん!」
そう、フランの外出時の洋服はレミリアが美鈴に命じて作らせた日光対策の魔法を編みこんだ特別製である。勿論、材料の調達や魔法の編みこみは咲夜やパチュリーも手伝ってはいたが、実際にそこから作ったのは美鈴であった。(ついでに言えば、その製作の裏で功労者として門番を一人でこなしたみせたパンダもいたが、その疲れが祟って今は詰め所でぐっすりと寝ていた)
「喜んで頂いて嬉しいです。霜月さん、フラン様をよろしくお願いします」
そういって美鈴が頭を下げると、霜月も軽く首を下げる
「任されました。じゃぁ、行ってきます」
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃいませー」
そう言って、2人は美鈴に見送られながら出立した。日は高く、空は青く、道は明るく、2人の出立を祝福していた。
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